◆ Last Song (2)◆
「全然降り止まないんだ…」 帰り道、啓太は足を止めてまた空を見上げた。 見渡す限りの空の全てから白い雪がフワフワと舞い降りてくる様を見ていると、 その中に吸い込まれそうな錯覚さえ覚えた。 「この雪が止んだら…」 忘れられるだろうか? 「この雪みたいに…」 溶けて消えるだろうか? 「でも…」 啓太の中にある七条との想い出は決して失われない。 七条が啓太との事を忘れてしまったままだとしても、 啓太の中にある想い出が失われる事はないだろう。 「辛くても…忘れたくないもんな…」 もし、この雪が啓太の悲しみの数と同じだとしても、 その数と同じだけの幸せもあった。 「俺が覚えている限り…」 たとえ七条の中になくとも、自分の中にあればその存在は意味を失う事はない。 「それでいいんだよな…それで…うん」 歩く度にサクサクと鳴る雪が、少しだけ心を軽くする。 そんな真っ白な雪の上を、啓太は再び歩き始めた。 見送りの為に啓太が学園へ戻ろうとしていた頃、 帰省準備を終えた七条は西園寺の部屋でその時を待っていた。 「郁、忘れ物はありませんか?」 「そういうお前はどうなんだ?」 「ありませんよ」 「そうか…」 「ハイ」 他愛のない会話をする七条と西園寺。 そんな中、西園寺は迷っていた。 先日の3連休の後、七条は何かを思い出したのか 『郁は…伊藤くんを気に入っているんですか?』 やたら啓太を気にするような言動が増えていた。 あの連休の間に何かあったのは七条の様子から伺えたものの、 それを聞く訳にもいかないまま今日を迎えた二人。 「臣、本当に忘れ物はないのか?」 お前は本当にこのままでいいのか? それは本当にお前の望んだ事なのか? 西園寺はそんな意味を含めて七条に再度問う。 「それは…どういう意味ですか?」 (やはり…か) ついこの間までの七条であれば、おそらく「ハイ」と即答しただろう。 が、やはり七条の中に迷いが生じているのか 七条は西園寺の言葉を探るように考え込んでいた。 「いいか臣、お前は…こ…」 こ…のままでは一生後悔する事になるやもしれん…。 おせっかいとは解っていたものの、この状況を放置しておくには余りにも啓太が、 そして七条が哀れに思えた。 だからこそ、西園寺はあえて口を開こうとしたが…。 「そろそろ時間です、行きましょうか?」 タイムリミットだった。 迎えの車が到着する時刻を七条が告げる。 「仕方…ないという事なのか…」 「郁?」 「臣、このままではお前は過った道を進む。それもお前が選んだのだから仕方ないが…その意味を知った時に一生を後悔するといい!!」 「どういう事ですか…?」 「うるさい!お前が全て悪い!お前は…人として幸せに生きる為に必要なものを自分で不要と判断したのだ!」 「郁…」 「私は先に行く、お前は荷物を持って後から来い!」 ハッキリと言えず、苦手な遠まわしな言葉に自分でイラ付いた西園寺は 結局1人腹を立てて先に部屋から勢い任せに出て行った。 「過った道?一生を後悔?僕が全て悪い?一体郁は何を…」 癇癪を起こした子供のような態度で西園寺出て行った扉を見ながら、 西園寺の言葉を頭の中で反芻した。 「ど…うして彼を思いだすんでしょうか」 すると、七条の中に1人の顔が浮かんできた。 「そういえば彼も…」 『貴方が俺を拒絶したんです。俺じゃなくて…七条さん、貴方が俺を…』 泣き顔に精一杯の笑顔を浮かべながらそう言っていた。 『七条さん…さようなら…』 そう告げた啓太に向かって、あの時自分は何をしようとしただろうか。 「らしくない事をしようと…したんですねぇ僕は」 泣きながら部屋から出て行った啓太の後を追おうとしたのではなかっただろうか。 西園寺という場所以外に何も求めない自分が、あの時確かに啓太の後を追おうとした。 「僕と彼との間に何か…が存在した、という事でしょうか」 一体何が存在したのだろうか? 「帰るまでの時間に…郁に聞く事にしましょうか」 おそらく西園寺は全て知っているに違いない。 実家に着くまでには大分時間がある。 その間に西園寺に聞けばいい。 「そうしましょう、さて…僕も…」 七条はそれ以上は考えるのをやめ、荷物を持って部屋を出ようとした。 「そういえば…」 その足が不意に止まる。 ふと思い出したのは… 「今日も見ませんでしたねぇ…」 マンションでの一件があるまでは、常に視界の隅にいた啓太が 消えたかのように姿を現さなくなった。 「だから…どうだというんでしょうかねぇ…」 寂しい? 「いや、そんな筈は…………な…」 と、突然の動悸と眩暈に襲われ、七条の意識はそこで途切れた…。 「あ!西園寺さんっ!!」 寮の入り口にいる西園寺を見つけ、啓太は手を振りながら駆け寄った。 「よかった…間に合わなかったらどうしようかと思いました!気をつけてくださいね!!」 西園寺にそういいながらも啓太の心はもう1人の姿を探していた。 「啓太、臣は置いていく」 「えっ!?それ…どういう事で…」 「すまない、もう時間がないのだ。詳しい説明は出来ないがとにかく後は頼む」 「西園寺さんっ!ちょっとまっ…」 「臣は倒れた、とにかく後は頼んだぞ」 「倒れたっ!?ちょ…西…」 啓太が呆然とする中、西園寺は言うだけ言うと車に乗り込み行ってしまった。 「何?あーもう訳わかんないよっ!!」 混乱する頭を抱えて啓太はその場にしゃがみ込んだものの、 「倒れた…って言ってなかったっけ???」 『臣が倒れた』 その言葉をハッと思いだす。 「行かなきゃ…」 コートや頭にうっすら残る雪を払い落とすと、啓太は走って七条の部屋へと向かった。 自室のベットに静かに眠る七条。 啓太はその側に椅子を置いてその様子を見守っていた。 「どうして倒れたんですか?」 眠る七条から答えが返ってくる事はない。 だからこうして話しかける事ができるのだろうと啓太は思う。 「七条さんは…どうして忘れちゃったんですか?」 聞きたくて聞けなかった事を口にしてみる。 「忘れたかった…んですか?」 一度口にすると次々溢れる言葉。 「そうじゃない…ですよね?」 「偶然忘れた…だけなんですよね?」 「もう思い出さないんですか?」 「忘れたままでいいんですか?」 溢れる言葉に誘われるように溢れ出した涙。 「もしも貴方がこのままだったとしても…俺は…」 その涙を拭い、眠る七条の手をそっと握り締めた。 「貴方を…忘れない、絶対に…忘れない…から…」 そしてその手を自分の頬にそっと寄せ 「貴方を…想う事を…俺から…奪わないで…俺の中で想う事を…許して…」 静かに涙を流し続けた啓太。 啓太はその涙を優しい指先が拭ってくれている事にしばらくの間気付かなかった。 「そうやって…泣いていたんですね」 そして眠っていたはずの七条の台詞にも気付かないまま、泣き続ける。 「僕の犯した過ちは…まだ許されるんでしょうか…」 ゆっくりと身体を起こす七条。 啓太はやっと、七条が意識を取り戻したことに気付いた。 「七条さ…」 「ただいま…戻りました」 「うぅっ…」 優しく微笑む七条の笑顔に、啓太は七条が記憶を取り戻したことを悟る。 そしてその身体に飛び込むようにしがみ付いてまた泣いた。 啓太の涙が止まるまでの間、七条はただ黙って啓太を抱き締めていた。 啓太もその腕に胸に身体を預け、我慢して溜まっていた涙を全て流し出した。 そしてゆっくり身体を離し、やっと戻ってきた七条の顔を見上げる。 「伊藤くん…僕は…」 啓太は頭を振って七条の言葉を遮る。 「何も言わないでください。俺は…こうしてまた…七条さんに逢えただけで…っ…」 「郁の言うとおり、僕は…一生を後悔の中で過ごすところだったんですね…」 (君を失った事を知らないまま、昔のように世を疎んで生きたかもしれません…) 七条は啓太の耳元でそう呟いた。 数年後、数十年後に記憶を取り戻したとしてももう遅い。 そして失った物の大きさに絶望し、後悔の中で一生を終えたかもしれない。 思い出さないままつまらない人生を過ごし、そして1人でその生涯を終えたかもしれない…。 「まだ僕は…居場所を失った訳ではないです…よね?」 七条の瞳が揺れる。 啓太はその首に腕を回すと、七条の額・目尻・頬、そして唇に自分の唇を優しく押し当てた。 「もう…何も言わないでください、俺は…七条さんがいてくれればそれでいい…」 そして再び唇を重ねた。 柔らかく温かい感触。 互いが求めて止まないその久しぶりの感触を確認し、心の求めるままに身体を重ねた。 「んっ…ぁ…」 胸の突起を弄られる刺激に啓太の身体がピクンと跳ねる。 七条はその反応を楽しむように、執拗のその突起を指で捏ね回し続け、 一つを指で、一つには舌を這わせて指先と舌先で尖る突起を感じ味わった。 「ぁ…っん…っ…」 そして啓太もその刺激に反応し、 嬌声を上げながら胸元にある七条の頭を抱き締め、その髪に指を絡めて快感を追う。 「ぁあっ…も…っと…」 やがて勃ち上がるモノを咥えられ、ビクビクと身体を震わせながらも 素直に快楽に身を任せて身体を揺らす啓太。 尖らせた舌先がチロチロと先端の割れ目を突付かれ、 根元から先端までネットリと舌を這わされ、 スッポリと口に咥えられて扱かれ… 「しちじょ…さ…ぁ…」 啓太は七条の頭を抱えるようにしてその精を放った。 吐精の快感に身体を揺らし、 腰を揺らして七条の口腔に放つも不足している啓太の中の七条。 余韻に浸る間もなく啓太は自分から七条の上に跨り、 自ら腰を落とすとその身に七条を受け入れた。 「あっ…ぁあっ…んっ・んんっ…」 その胸に手を着いて上半身を支え、自ら腰を上下に動かして夢中に七条を扱く啓太。 今までにない程積極的な啓太の激しさに、七条は自分のした事の大きさに改めて気付く。 そしてこんな風に自分を求める程、啓太を辛い目に合わせていた事に辛さを感じた。 しかし、感じたのはそれだけではなかった。 啓太をこんな風に出来るのは自分だけ、 自分の行動一つで啓太はどうにでもなる、 どうにかなってしまう事を知り、それに胸を躍らせた。 (彼は決して…僕から離れない、きっと…) 自分が思っている以上に自分を必要としている啓太。 それを知った七条は、自分の中に今までにない感情が芽生えた事に気付いた。 (伊藤くんは僕の拠り所…そして僕も伊藤くんの拠り所だったんですね…) 互いの動きに合わせ、夢中に腰を揺らす二人。 吐き出しては余韻に浸り、そしてまた互いを求め 離れていた間を埋めるように、一晩中お互いを貪り続けた…。 ようやく互いを開放し、ベットで抱き合っていた七条と啓太だったが カーテンの隙間から見える外の様子に啓太がもそもそと這い出した。 「また雪が降ってきたみたいですよ!」 明け方前で薄暗い外が、雪のせいで普段より明るく見える。 はしゃいでいるような啓太だったが 「ずっと見てたんです…」 「?」 「1人でずっと…雪が降ってくるのを見てました」 「伊藤くん…」 「もう我慢しなくて…いいんですね…」 「ええ」 「七条さん、おかえりなさい…」 そう言った啓太の顔は 『七条さん…さようなら…』 そう言った時と同じだった。 七条はその身体を後ろからしっかりと抱き締めた。 そして何度もその耳元で囁いた。 ただいま…と。 END 001 》》》 top 》》》 xxx あとがき xxx うーん微妙。 何かなぁ…ハショリまくった感が拭いきれない(汗) で、結局目的は何だったんだろう不思議。 えーっと多分ね、 ボンヤリと雪の降る様を見上げて泣く啓太 ドアを叩いて食い下がる啓太 それをアッサリ無視してドアを閉める七条 縋るように叫ぶ啓太 そして…涙に咽ぶ啓太 こんな感じが妄想出来たから書いたのかと(はい?) だってだって! あの歌聴いてたらこのシーンがバーンとドーンと浮かんだんだもん♪ (すげぇ妄想) ってか、無視?されてドアを叩きつづけても…返事がなくて、 そのドアの前で崩れ落ちる! そんな様がセットで浮かんだの(うふ) 結果、妄想したもん勝ち!って事で!! 以上!!(異常だろう絶対)